『天然酵母』と『イースト』の違いって?

ヴェジセレブのピッツァは『天然酵母』の力で
あたりまえに、膨らませていますが、
その違いについて、調べてみました☆



天然酵母」も「イースト」も、「酵母:yeast(イースト)」としては同じ天然に存在する菌だという事です。その違いは、酵母が何を培地(酵母のエサ)としているかだと考えられます。「天然酵母」は果実や果汁などを培地とし、自然の力で育ちます。「イースト」は、サトウキビ等から砂糖を作った後の残り汁である廃糖蜜と呼ばれる砂糖液に、リン酸塩や窒素、アンモニアや硫酸など複数の添加物を加えて純粋培養されます。つまり、製造過程で化学物質が使用されるという事です。

天然酵母」は、培養基になる果実から酵母まで、全て自分の目で確かめて、安全なものだけで作る事が出来ます。しかし、自然に存在する複数の酵母が培養されるため、パン焼きに適した1種類の酵母だけを純粋培養する「イースト」よりも発酵力が弱い場合が多いです。また、自然状態なので乳酸菌や雑菌も含まれています。そのため、雑菌が増えすぎないよう管理には気を遣う必要があります。つまりきちんと育てるためには愛情と手間がかかるということですね。

パンを焼いて商売にするという視点で見れば、「イースト」は安価で扱いやすく、パン生地の発酵を自由にコントロールしやすいという利点があります。特に発酵学を熟知したパン焼き職人にとっては、「イースト」製造過程における微量の添加物より、強く安定した発酵で自由自在にパンを焼くメリットの方が大きいと思います。

ちなみに個人が経営する小さなパン屋さんではあまり使用していないと思いますが、大量生産のメーカー製パンには「イースト」以外に「イーストフード」と「乳化剤」が使われている場合があります。これらは短時間で大量のパンを発酵させるための添加剤(化学物質)です。塩化アンモニウム塩化マグネシウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム(無水)、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、焼成カルシウム、ビタミンCなどなど…

また、口当たりを良くするために、安易に砂糖や卵、バターや牛乳などを入れていたりもします。こうなると、パン本来の風味というのは感じられなくなるんじゃないでしょうか?

このように「天然酵母」のパンは、「イースト」のパンに比べて取り扱いに手間とコストがかかります。しかしその代わり、複数の酵母や乳酸菌が複雑な働きをし、素材の持ち味が引き出され、独特の風味と深い味わいが出ます。焼き上がったパンは「ヨーグルトのような発酵の香り」がし、キメはやや粗めで、食感はもっちりとして歯ごたえがあります。

天然酵母」のパンが一般的に良いと言われるのは、原料から吟味した自家製の酵母を使い、素材にこだわって手間暇を惜しまない作り手の姿が、パンの向こうに見えるからだと思います。効率良く作れる便利な食物というのは、それと引き換えに危険性をともなう場合があるという事です。ですから、作る人も利用する人もそこを自覚して、それぞれの価値観で選べば良いのではないでしょうか。

せっかく「天然酵母」を使用していても、小麦粉や水、塩などメインとなる原材料がオーガニックでなければ、あまり意味がないですよね。逆に言えば、原材料全体が良質ならば、「天然酵母」か「イースト」かの違いは、思想的な違いであって、物質的にはそれほど大きな違いではないとも考えられます。しかし、現在の消費者は価値観(思想・考え方・趣味・好み)を大切にしますから、そういった意味では思想の違いは大きなブランド(信用)の違いとなり得るかもしれません。