ワイン忘備録 


◎ロベールアルヌー

アルヌー・ラショーは、ヴォーヌ・ロマネの名門ドメーヌとして名高いロベール・アルヌーが2008年から改称したものである。先代のロベール・アルヌーは父の死に伴い、26歳の若さでドメーヌを継承。もともとロベールの両親はともにヴォーヌ・ロマネの出身でいくらかの畑を所有していたが、それを大きく広げたのはロベールである。しかし、彼は3人の娘をもうけたが、跡取りとなる男子がいなかった。そこで末娘のフローランスが婿をとり、ドメーヌを継ぐ。その婿こそ、現当主のパスカル・ラショーだ。

パスカルは87年にフローランスと結婚。もとはボーヌの薬剤師でワイン造りとは無縁の家系であったが、結婚後、ブドウ栽培とワイン造りを学び、ドメーヌで働くようになる。95年にロベールが他界して以降はパスカルとフローランスのふたりでドメーヌを切り盛り。カーヴの拡張、醸造施設の改装、そして畑もさらに増やし、2008年にはラトリシエール・シャンベルタンをラインナップに加えた。

ヴォーヌ・ロマネがお膝元だけに、この村とニュイ・サン・ジョルジュを中心に数々のクリマをもつ。特級はロマネ・サン・ヴィヴァン、エシェゾー、クロ・ド・ヴージョ、それにラトリシエール・シャンベルタンとじつに豪華。ドメーヌが所有する畑の総面積は13ヘクタールを超える。

ブドウ栽培はリュット・レゾネ。手摘みでブドウを収穫し、ブドウは破砕せずに低温マセレーションの後、ステンレスタンクで自然発酵。樽熟成期間は平均14ヶ月で、新樽の比率は村名で20〜25%、一級畑で30〜50%。特級は100%新樽だが、ヴォーヌ・ロマネ1級のオー・レニョとレ・シュショにも100%の新樽を用いている。

こうして造られるアルヌー・ラショーのワインは、なんといってもバランスがよい。果実味が過ぎたり、樽香が強すぎることもなく、しかし、十分な凝縮感を伴っている。

ブルゴーニュ・ルージュはラベルにピノ・ファンとあるとおり、畑の中で選抜した小粒の実のなる優良株を増やしたマサル・セレクションによるもの。ドメーヌのラインナップの中でもひときわお買い得なワイン。
また一級のレ・シュショは特級並みのポテンシャルをもつ逸品である。

2011年からは長男のシャルルが加わり、ますますの発展が期待されている。


◎ドメーヌ ジャンテ・パンショ

1955年、エドモン ジャンテ氏とベルナドット・パンショ氏が結婚し、ジャンテ パンショは設立されました。ジュヴレ シャンベルタンに本拠地を置き、徐々に畑を増やし、現在ではジュヴレ シャンベルタンを中心に約12haの畑を所有しています。現在は当主のヴァンサン・ジャンテ氏と息子のファビアンがドメーヌを運営し、力強さがありながらも、エレガントなスタイルのワインを造り、高い評価を得ています。



リュット レゾネ(減農薬法)を実施し、除草剤を使わないようにこまめに鋤き入れを行っています。また、摘葉・グリーンハーヴェストも行っています。収穫は手摘みで、ブドウの実を潰さないように小型のプラスティックケースを使用。収穫後に選果台にてさらに厳しい選果を行っています。



10℃で8日間低温マセラシオンを行い、その後天然酵母にて発酵します。樽熟成は新樽比率平均30%で約13ヶ月間。バトナージュはマロラクティック発酵前に週1回、スーティラージュ、コラージュ及びフィルターがけを行わずに瓶詰めされます。


世界中のワインラヴァーを魅了する銘醸地、ブルゴーニュ。 その中でもひと際有名なアペラシオンである、ジュヴレ・シャンベルタンにジャンテ・パンショの本拠地はあります。

◎プスドール

1997年からが新時代の始まり 最先端を纏うヴォルネイの歴史的古参。

かつてロマネ・コンティのオーナーであったデュヴォー・ブロシェ家の所有地の一部が、ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドール。
1964年、投資家たちにより再構築され、その時に醸造長となったのがジェラール・ポテルであった。
やがて、ポテルが株式の半分を取得し、もう半分をオーストラリアの投資家たちが所有していたが、1997年にポテルが急死。
ドメーヌは売りに出され、これを購入したのが現オーナーのパトリック・ランダンジェである。

彼は医療機械、とくに整形外科のビジネスで成功した人物だがヴォーヌ・ロマネに別荘をもっており、いつかは畑を買い、この別荘をドメーヌにしたいと夢想していた。そんな折、プス・ドール売却の話を耳にしたという。
手に入れるや否や、200万〜300万ユーロの資金を投じて、醸造施設や発酵用の木桶、他の設備も一新。1999年に完成した醸造施設は6層構造になっており、収穫から醸造、樽熟成、瓶詰めまで、ポンプを一切使わず重力でブドウ果汁やワインが流れる仕組みになっている。

ランダンジェが投資したのは設備だけに止まらず、ブドウ畑の拡張も盛んに行われている。
1998年にコルトン・クロ・デュ・ロワ(1.45ha)とコルトン・ブレッサンド(0.48ha)を手に入れ、2004年にピュリニー・モンラッシェ1級カイユレ(0.73ha)。
そして2008年にはシャンボール・ミュジニーのドメーヌ・モワンヌ・ユドロを買い取り、村名シャンボール・ミュジニー(1.41ha)、1級のグロゼイユ(0.52ha)、フースロット(0.42ha)、シャルム(0.19ha)、レ・ザムルーズ(0.20ha)、そして特級ボンヌ・マール(0.17ha)をラインナップに収めた。
その代わり、2009年にサントネイ1級のグラヴィエールは売却。

ブドウ栽培はすべてビオロジック農法がとられている。
赤ワインの醸造では木桶とステンレスタンクを併用し、7日間の低温マセレーションの後、日に2回のピジャージュをしながら長いキュヴェゾンを施す。樽熟成は1級で1/3、特級で40%前後。トータルで15ヶ月間。
白ワインは圧搾後、24時間のデブルバージュを経て、樽発酵、樽熟成。ただしただの小樽ではなく350リットルの中樽を用いる。新樽比率は50%。

ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールのワインはピュアで洗練されている。
果実味、酸、そしてタンニン、それぞれの要素が高次元でバランスよくまとまり、若いうちから十分に楽しめ、熟成にも耐え得るタイプだ。
とくにブルゴーニュ大公家が所有し、その後フランス王家のものとなったとされる、このドメーヌのモノポール「クロ・ド・ラ・ブス・ドール」は、力強さとエレガンスのせめぎ合いが面白いワインである。

さまざまなアペラシオンが増えたとはいえ、ヴォルネイを語る上で欠くべからざるドメーヌのひとつだ。
ジャンテ・パンショの起源は1954年に遡り、現当主のヴァンサン・ジャンテ氏の父、エドモン・ジャンテ氏によって創設されました。 現当主のヴァンサン氏が本格的にブドウ栽培、ワイン造りに携わり始めたのが1977年のこと。そして、ジャンテ・パンショのワイン造りを一手に担うようになったのが1989年からです。

ヴァンサン氏はドメーヌを継いで以来、ヴィニュロン(ブドウ農家)としての頭角を現し確実に実力をあげてきており、ワイン評価誌各誌で絶賛、ロバート・パーカー氏も「彼が継いでからのジャンテ・パンショのワインは、見つけたら即手に入れるべき」と評価しています。
ジャンテ・パンショのワイン造りの特徴といえば、なんと言ってもその丁寧さ。実のところ、ヴァンサン氏はハーレー・ダヴィッドソンを乗り回し、ワイン造りの傍ら消防士も務めるという男気あふれる人物。 ともすればこわもてで荒々しい印象を受けるのですが、ことブドウ栽培、ワイン造りに関してはひたすら丁寧に、愚直なまでに純粋な果実味を追い求めています。

ジャンテ・パンショはジュヴレ・シャンベルタンだけではなく、シャンボール・ミュジニーの一級畑などの優良な畑を少しずつ買い足し、現在では合計で13ha程の畑を所有しています。
また2006年以降はヴァンサン氏の息子であるファビアン氏がドメーヌの仕事に携わるようになりました。ドメーヌがヴァンサン氏へ受け継がれた時に素晴らしい変化があったように、ファビアン氏もまた、このドメーヌ・ジャンテ・パンショに新たな息吹を吹き込んでくれることでしょう。