鞍馬寺 五月満月祭

5月3日は満月


【五月の満月には天界と地上の間に通路が開け、ひときわ強いエネルギーがふりそそがれるという。この夕、満月に清水を捧げ心のともし灯を輝かせつつ、ふりそそがれる神秘的なお力を身に受けて、自分とすべてのものの「めざめ」のための熱い祈りを捧げるのが、光と水と聖音の祭典「五月満月祭(ウエサクさい)」である。

祭典は三部に分かれ、第一部は「きよめ」の祈りで、祭典に集う人々は、まず自己と場の浄化のために魔王尊を讃仰(さんごう)する。月が天頂に近づくころ、ひとりひとりが持つ純粋無垢な心の象徴の「心のともし灯(び)」に灯が点(とも)される、祭場がともし灯に埋まると、銀碗に清水を満たし月に祈りを捧げる。

次にともし灯を高く掲げて、真実に生きぬくための強い力を与え給えと「お力の宝棒」の加持(かじ)を受け、月光のふりそそがれた明水をわかち頂き、慈愛のみ恵みを心に満たす。そして第二部では、月光を受けながら大地に腰をおろし静かに「はげみ」の瞑想を行い、夜明けの近い第三部には、智慧(ちえ)の光を輝かせ真実に生きることへの「めざめ」を象徴する聖火が天を衝(つ)いて上がる。

最後に全員で『心の書(ふみ)』を唱え魂の夜明けを迎える】


僧正ヶ谷に牛若丸に兵法を授けたのは鞍馬山の大天狗である。 世にいう「天狗さん」は物語に伝説に大活躍するが、鞍馬の山では「護法魔王尊(ごほうまおうそん)」の使者としてお働きになっていると考えている。 護法魔王尊こそ天狗さんの総師である。

鞍馬山の本尊は宇宙の大霊であり大生命であり大光明、大活動体であり「尊天」と申し上げる。  そのお働き(エネルギー)は、水のこころのような慈愛のうるおいと太陽のような光と暖かさと、そして大地のような浄化の力として現れ、それらを人々に授ける。  この慈愛と光明と活力を、それぞれ千手観世音菩薩毘沙門天、護法魔王尊の御姿で表し、三身一体尊天として本殿に奉安している。

尊像は三様であるが、時に応じ機に臨み、あるいは一体となって、あるいはそれぞれのお働きで、様々に応現する。  殊に大地の力の顕現としての護法魔王尊は太古より鞍馬の山にまします山霊であり、地球の霊主として、人々に希望、勇気、忍耐、決意と授け、破邪顕正のお力を奮い邪を真理の正道に改め導く。

時空を越えて飛行自在、変化自在、何時でもどこでも見守り見そなわし、どのような時でも心の中まで見透かしている。 その眼力から逃れることも隠れることもできない。 それ故んい人々は畏敬の念を抱き、あらたかな神として崇めてきた。  また地球の霊主、大地の力の神である護法魔王尊は、母なる大地がその懐に全ての生命を摂受(しょうじゅ)し、形あるのもとして再び地上に甦らせるように、再生の活力をも持つ。 見えるもの見えないもの、あらゆるものを清め、直くし、新生の姿、働きとして進化向上の力を与える。

五月満月の夜の祈り、祭儀においては、地上の全てを清め給え、人々を真智の光に導き給え、深き慈愛のみ心をもてすべてを護り給え、とあつき祈りを捧げる。

地上の清めと共に、人間の心の奥に隠れている汚れを清める「護法魔王尊」。 その指名をおび使者として働く「天狗さん」、混沌とした世相の今こそ、秘めたる御力を顕し、ご活躍くださることを切に希い、こころから祈っている。


転載元 ウエサク