回虫でアレルギーが治る!?
●回虫がアレルギーを防ぐ
排便の流れる川で子どもたちが水遊びをし,その水で炊事や洗濯をしている。
実際,調査すると全員が回虫にかかっている。
ところがですよ,我々から見たら,そんなバイ菌だらけの汚い生活をしているにもかかわらず,
子どもたちの表情はみんなはつらつとしていて,肌もつやつやと黒光りしている。
その上,アトピー性皮膚炎,花粉症,気管支ぜんそくなどのアレルギー疾患の人がどこを探してもひとりもいない。
当時,日本の子どもたちにアレルギー疾患が増えだし,奇病として注目され始めた頃です。
「これは回虫がアレルギー抑制に関係しているのでは」
と直感的に思ったんです。
虫の知らせとでもいいますか(笑)。
それで一生懸命に寄生虫をすりつぶしては研究をつづけました。
結果,回虫のアレルギー抑制物質というのを解明したわけです。
研究を初めて五年後の昭和五十二年のことです。
ところが「回虫が消えたからアレルギー疾患が増えた」なんて論文を書いても誰も認めてくれない。
研究成果を発表してからも十五年間くらいは黙殺されました。
学会が私の学説に対してアレルギーをもっていたんですね(笑)。
むしろ欧米の研究者が注目してくれました。
その間にもアレルギー患者は増加の一途をたどっている。
それで一般の日本人に直接知ってもらおうと書いたのが「笑うカイチュウ」でした。
この本が講談社出版文化賞をいただき,ベストセラーにもなったおかげで
やっと私の研究が広く世の中に認知されることができたわけです。
一方,「そんなに寄生虫と共生しろと言うなら自分で飲んで見ろ」とも言われ,
それならばとサナダムシを飲んでみたところ,
花粉症にもならず,中性脂肪もコレストロールも大幅に落ち,至って健康になりました(笑)。
有史以前から人と共生してきた回虫ですから,横から栄養を横取りするだけで悪さはしません。
むしろ人が元気でいっぱい食べてくれないと困るわけですから,
宿主をアレルギーにもガンにもなりにくい体質に変化させてくれるわけです。
効果抜群なのを見て取ってか,女房もサナダムシを飲みましたね(笑)。
ただ回虫にも好みがあって,いろいろな人たちに飲ませてみたんですが,
二,三か月で外に出ちゃう人もいるんです。
「虫が好かないやつ」ということでしょうか(笑)。
この話をすると,必ずサナダムシの卵が欲しいとおっしゃる方がいますが,
卵を飲んでも子どもは孵りません。
サナダムシの卵をもつ人のうんちが川に流され,
卵が孵化したときにミジンコに食べられ,
そのミジンコをサケやマスが食べ,
そのサケやマスを人間が食べないと人の体内には入らないんです。
非常に遠大なロマンなんです。
将来,中国や北朝鮮のトイレがすべて水洗化されるとサナダムシの絶滅は必至です。
ぼくにとってはトキの絶滅よりつらいことです(笑)。
東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎は、回虫(ヒト回虫)の寄生が花粉症などのアレルギー性疾患の防止に効果があると説いている。それによると、花粉症は花粉と結合した抗体が鼻粘膜の細胞に接合し、その結果としてヒスタミン等の物質が放出されて起こるが、回虫などの寄生虫が体内にいる場合、寄生虫は人体にとって異物であるので対応する抗体が大量に産生され、しかもそれらの抗体は花粉等のアレルギー物質とは結合しないので、アレルギー反応も起こらない。近年アレルギー性疾患が激増しているのは、回虫保有率が極端に減少したためであるという。少数の回虫寄生であれば、むしろ人体に有益な面も見られると考えられる。
人類は数百万年もの昔からヒト回虫に冒されて来たのは確かで、従ってヒト回虫とヒトには安定した共生関係が成立していると考えられるので、そのような可能性も考えられる。